げえむ語り:あの、素晴らしい  をもう一度


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ジャンル アドバンスドノベル
ハード X68000/Windows
発売日 Windows版 2002/03/22(X68000版 不明)
発売元 自転車創業
公式サイト http://www.anos.co.jp/anos1/anos1.htm

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主人公との一体感

 上で書いたように、このゲームを繰り返しプレイする行為は、主人公がゲーム内において「堕天使討伐の旅をやり直す」行為と重なっている。バッドエンドを迎えたときの主人公の悔しさはプレイヤーの悔しさでもあり、「次こそは」と共に願ってオープニングに戻る。そしてまた、堕天使を倒す旅に向かう。リトのため。

 そしてついに堕天使を倒し、リトに本当の笑顔が戻る――その瞬間、激しい違和感を覚えた。望んでいたハッピーエンドが目の前にあるはずなのに。他の仲間の意味深な言動。自分より先にいた水晶の住人の謎。主人公の記憶が欠落した部分で何かがあったはずなのに、明かされていない。このまま放っておいていいのか?

 その違和感を抱えた者にもたらされる、「やり直し」が始まる前の記憶。プレイヤー=主人公は再び旅をやり直す。そして、その中で得た断片的な情報をつなぎあわせ、ある決意を抱く――

 堕天使を倒した後から、主人公の本当の旅が始まったと言ってもいいんじゃないだろうか。ただリトのためだけでなく、自らの生き様を貫くための旅。主人公が無色透明なプレイアブルキャラから、過去を背負った一人のキャラクターとして動き出す。それなのに、プレイヤーは突き放されることなく、ここでも主人公と共に旅をしている。おそらく、私と同じように違和感を持ち、堕天使を倒した後も旅を繰り返したプレイヤーはみんなそうだったと思う。この一体感にやられた。自分の分身でありながら、同時に個性を持つ魅力的なキャラクター。ってプレイヤーのナルシズム?(爆)

 最初はリトがメインで主人公は狂言回しだと思っていたけど、最後はまぎれもなく主人公が主役だった。そして主人公と共に、プレイヤーである自分も主役であることを感じられた。小説にしたら100ページもいかないであろう短いお話にこれだけのめり込める、それがこのゲームの  だと思う。