正義の味方・感想――「番組」という枠の意味


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1周目終わりました。
うーーーーーんもったいない。もやもやするのでここで吐いてみたり。もやもやなので、わざとプレイ記録の最終話からリンクしてなかったり。もやもやなので、読んでもあんまり気持ちのいいものではないと思われたり。以上警告。

「体験」と「演出」のズレ

公式サイトによると、このゲームは「特撮ヒーロー体験ゲーム」。でも、ゲームの付属マニュアルを見ると、30分間の特撮番組でヒーローらしく立ち回り、番組を盛り上げるのが目的……それって正確には、「特撮ヒーロー番組演出ゲーム」なのでは?

他の人はどうか知らないけど、私はものすごくここにひっかかった。かっこよくセリフを決めてみても、必殺技で勝利しても、「あくまでこれは特撮ヒーロー番組」と思えば醒めちゃうじゃん。怪人をやっつけてめでたしめでたし、の後に視聴率グラフや視聴者からのおたよりを見せられれば、嫌でも「番組という虚構の中で立ち回っていただけなんだ」と思うじゃん。疑われていた刑事から信頼を得る主人公、代償など求めず悪に立ち向かっていく主人公……せっかくぐっとくるような場面があっても、やっぱり「番組の中の話だから」って思っちゃうよ。

正直、「特撮ヒーロー番組を盛り上げる」なんて枠組みをいちいち設定しなくても、ストレートにに「ヒーローとなって、市民の平和を脅かす悪と戦う」でよかったような気がするのは私だけでしょうか。ヒーローらしさを測る指標は、何も視聴率に限ったことではないんだし……例えば内部パラメータにして、ヒーローらしさがアップすれば町の人たちが親切になる、とかでもいいだろうし。勝手な想像だけど、「視聴率でヒーローらしさを測る」というアイディアに引っ張られた結果のような気がしてならない。

そういえば主題歌のタイトルって、『パートタイムスーパースター』だったよな。そういうことですか。へえ。30分経ったら戻らなくてはならないのです。舞台の外、番組を演出している自分へ。個人的にはさらに外、「番組演出ゲームで遊んでいた自分」まで戻されてましたが。

一歩引いている感じ

そんなわけで、私はヒーローにはなりきれなかった。けど、そもそもなりきることがゲームの目的ではない、と考える。おそらくは、特撮もののパロディとして楽しませる方がメインなんだと思う。子どもの頃の記憶をなぞって「そうそう、こういう展開あったよねー」などと指さして懐かしみつつ楽しむためのもの。

私も最初の頃は、そういう要素でも楽しんでたんだけどねー。喫茶店のマスターとか謎の宇宙生命体(アジャラ)とか、そうそうあるあるーというノリで。でもだんだん楽しめなくなってきた。確かにキャラ設定やヒーローになるまでの経緯、あるいは敵側幹部の確執や、町の人たちから理解されないヒーローの孤独……等々、それっぽい要素はちりばめてある。けど「それっぽい」以上のものを感じない。

いかにも特撮っぽい、思わせぶりなセリフや場面を出しておいてオチがない、が多くて気になった。私さー、ダークミラー(第7・8話登場。プレイ記録では名前うろ覚えだったので、「ドール怪人」と呼んでました)のエピソードで絶対見せ場があると信じてたんだよね。友達がほしくて子どもを公園からさらっていたとおぼしきダークミラー、その過去エピソードが語られるとか、それで結局ゲネスを裏切るとか……特撮番組なら、一怪人でもいろいろなエピソードがあったりして、下手すると主役を食っちゃうような回だってあるじゃない。それが結局、何にもなかったのにはがっかり。
また、味方にしても個々のエピソードが少なすぎるよなー。味方というより、番組進行のためのコマにしか見えんのが悲しい。下手すると主人公までそう見えちゃうんだからなおさら涙。

なんつーか、制作者腰が引けてませんか? と感じちゃうのは私だけだろうか。上記のオチのないセリフや場面、特撮ものっぽい設定というだけの登場人物――知識として「特撮ってこんな感じ」「こういうお約束がつきもの」とは知っていて、それをゲームに反映してはいるけど、機械的な感じが拭えない。特撮は好きなんだけど、その自分をどこか醒めた目で見ながらゲームを作っていたような。

百歩譲って、予算とか制作期間とかの都合でそこらへんがつくり込めなかったのかもしれない、と考える。でもやっぱり、しつこいけど、「特撮ヒーロー番組」という枠がイコール腰の引け具合に見えてしまう。「ヒーローなりきりゲーム」なんて言ったらライトユーザは引いちゃいそうだしねー、「ヒーローを操作して番組を盛り上げるゲーム」ってことにしましょうか――みたいな。そんな、作り手が先に引いてどうする。以上被害妄想。

(いや、腰が引けている云々以前の理由だったらどうしよう。例えば、「ヒーローなりきりゲーム」って何か引きが弱いよねー、「ヒーローを操作して番組を盛り上げるゲーム」の方が“今までにない”っぽいっていうか、キャッチーでいいか――みたいな。以上カフェインの摂りすぎで眠れぬ夜に見た幻)

一歩引くなら、もっと割り切って、「特撮番組制作」を前面に打ち出したシミュレーションにでもすればよかったのかなあ……このゲームでも、「視聴率が目標を下回ると打ち切り(ゲームオーバー)」という、現実を下敷きにしたような要素があるにはあるけど、もっとそこをつっこんで。例えば視聴率がふるわなかったら、「必殺技を番組中2回に増やせ」「敵の女幹部のコスチュームをもっと色っぽくしろ」等々とスポンサーからねじ込まれたり(笑) 逆に視聴率がよければ、予算が増えて爆破シーンが派手になったりとか。

いずれにしてもパロディって、やるならもっと、バカにしか見えないくらい徹底的にやらないとだめだよね。例えば『セガガガ』みたく。で、それをやるには、パロディの元となるものに痛いぐらいに思い入れがないとできないんじゃなかろうか。
あるいは、いつかどこかできいたある制作者の言葉を、一部変えて出してみる。どんなにオシャレやバカでごまかしても、マジがないとね。

その瞬間を待ちながら

えーと少し前の方に戻って、主人公になりきれなかった私。実は、ゲームの途中からある映画がかぶってたんですよ。タイトル忘れちゃったけど。

おそらくは近未来。ある一人の男性=主人公の一生涯がリアルタイムドキュメンタリー番組として世界中に放映されていて、周囲の人間はみんな役者、世界は壮大な舞台装置。あらゆるところから隠しカメラが彼を追う。主人公だけがそのことを知らず、普通の生活を送っているつもりだった。でも少しずつほころび始める現実。そして自分を取り囲む虚構に気づき、舞台の外へ出ようとする――というストーリー。

「特撮ヒーロー番組」という枠に必要性を見いだせないなら、いっそのこと……と、およそ実現性のない期待をしていたのか。制作者の思い入れが暴走して収拾がつかなくなった方がまだマシ、と思うのは、クソゲーバカゲーで痛い思いをしたことがないからなのか。
それなりに楽しかったが故に。じゃなきゃここまでプレイ記録つけないし。うーんもったいない。