わたしゃ孤高の元演歌歌手、らしい。そこに、ひょんなことから演歌に目覚めた一匹の宇宙熊がやってくる。「弟子にしてください!」に、「嫌だ」って返事したらどうなるんだろ、と思いながら、試す勇気がない小市民な師匠。クマは弟子となり、修行の日々が始まる。
そして2ヶ月が過ぎた頃、携帯電話にメールが。光年ミュージックのズズキという人から、あんたの弟子をデビューさせてみないか、だって。張り切るクマ。芸名も「東海林クマ男」と決まり、挨拶回りやらプロモやら……え、もうデビュー? 今回、やたら展開はやいな。まあいいけど。
しかしここではたと気づく。デビュー曲がない!っておい。そんなわけで、急遽曲をつくることになると。
まずは曲のテーマ選び。最初は3つしかないのね。「ミカン」だ。それ以外は許さん。ちなみにテーマは複数組み合わせることも可能らしいけど、最初は地道に1テーマ。
すると、クマがてきとーに作詞するので、できたものを添削。1フレーズ単位で修正個所を選んでケチを付けると、クマが代案を5つ提示するので、そこから選んでもよし、ダメなら再度代案5つを出させて以下繰り返し……となる。一から作り直しもできるけど、これやるとクマの機嫌がどうなるか分からないので極力使わず。
まだ最初だからなのか、なかなかミカンに関係するフレーズが出てこず。つーか人口無能並。
次にメロディ。クマに任せてよし、自分で「こんな感じ」と指定するのも可。とりあえず任せてみる。
最後にタイトル。これまた歌詞のように、クマが提示する案を好きなだけダメ出し。歌詞・タイトルに共通するけど、「あー、さっきの方がよかったー!」って時に、さかのぼって選び直すことはできないのね。むー。
そんなわけでデビュー曲完成。
タイトルはいいと思うんだけどなあ。歌詞の練りがイマイチかしら。などという迷いはおくびにも出さず、「師匠は今回の歌、どう思います?」というクマ男の問いに、「完璧だ」と答えてみたり。だめじゃん>わし
そしてステージ。うわー、衣装がいかにも売れない演歌熊。演出もカメラワークもやる気なし。まあデビューだし。
ステージ終了後は3ヶ月間のツアーに出るらしい。ってそこらへんは止め絵一枚なんだけど。その後、リスナーの感想がズズキによって届けられる。思った通り、ボロクソですな。
そして気になる売れ行きは、テレビ番組『演歌特急25時』の中で発表。上位10曲には……入ってないね、はい。
【売上】1万1千枚
【ランク】30位
……あからさまに暗いクマ男。デビューの話が来たときは、「自分なんかとんでもない」みたいなこと言っていたくせにー。ま、これからがんばれ。
衝撃のデビューから、えーともう3ヶ月経ったのか。いろいろあって、この世界では新曲を出すのは1年に4回までと決まっているらしい。なので季節ごとに次の新曲。
宇宙演歌協会から、メールという名のヘルプがどかどかと。あー、今回ヘルプはBBSじゃないのね。閑話休題。
曲作りにはクマの「演歌度」と「機嫌」が関係するとか、いい歌ができればステージの演出が派手になったりするとか、その他色々。あーやっぱり、デビュー曲の出来はイマイチだったのね。はは。
そんな散々なデビューでも、広い宇宙に好き者はいるらしく……ミカン好きの女の子からファンレターが来た。クリスマスにはミカンいっぱい、とか何とか。そしてそこから、クマ男は「クリスマス」という言葉を知る。で、そのまま歌のテーマに一つ追加と。演歌にクリスマスってどうよ。
というメニューがあったのでやってみる。人・物・場所の名前しか分かんないらしいんだけど。とりあえず、「けろけろ」(人)、「秋葉原」(場所)。教わった言葉は歌詞にばんばん使うらしいのだが。
【状態】演歌度低くご機嫌斜め
【テーマ】ミカン
いっちょまえに、1万1千枚にへこんでいるのかな。シャケの歌がつくりたいとか抜かすし。歌詞を直すといちいち反抗的な態度を示すし。あーうるさいうるさい。
今回はメロディを「情緒的に」と指定。こんなんなった。
ステージ、「販売」と「段々畑」はナイスフレーズだった、のかな? 文字が飛んでた。明らかに、前の曲よりは演出っぽいことがされている。ということは、売れ行きも……?
【売上】2万5千枚
【ランク】17位
リスナーの感想に、「前の曲より確実に進歩している」というコメントが。次は 10位に入れるかな。
どちらもクマ男にとっては、「いやーっ、不潔!」なものらしい。ある意味そうかも。
【状態】演歌度高く機嫌よい
【テーマ】四畳半
季節的にミカンもクリスマスも合わないので、庶民的にこのテーマ。
ステージ、なんかイマイチげな雰囲気……。
【売上】2万1千枚
【ランク】15位
あーやっぱり。リスナーの感想もダメムード。
おそらく四畳半暮らしと思われる男性からファンレター。テーマ「コタツ」をゲット。
そしてズズキから、「北川賞をめざせ」とのメールが。演歌界の大御所・北川十五郎を記念してつくられた、新人演歌歌手の登竜門的賞らしい。えーと、未だ10位以内に入ったこともないんですけど。次こそ結果を出せってことでしょうか。うえー。
そういえばやったことないなあと思って。「クリスマス」と「緑」は関係あるか?とクマ男に訊かれたので、「ある」と答えておいた。なるほど、こうやってテーマと歌詞に使われる単語を関連づけていくのか。
【状態】演歌度高く機嫌よい
【テーマ】コタツ + ミカン
冬と言えばこれでしょう。複数組み合わせると難易度が高い? 知らん。
……確かに難しいかも。ミカンらしきフレーズが最後の1行だけだ。クマ男に他のフレーズ出させても、テーマから離れていくばっかりなんだもん。時期尚早だったか。
ステージ、なぜか衣装が学ランになってるぞ。しかもクマ男、調子に乗ってつくってもいない2番まで歌ってるし。えーとこれは、賞狙いのスタンドプレイ?
【売上】1万5千枚
【ランク】20位
やってもーた。賞なんて100年早いわこりゃ。あー、暗くなるなよクマ男。しばらく地道に1テーマで行こう。
と思ったら、北川記念賞受賞だって。どうも北川センセが動物好きだからという噂が……授賞式に行って大丈夫だろうか、クマ男。とりあえず、もらえるもんはもらって来ましたが。
しかし何というか、実力を伴わない受賞って居心地悪いし、世間の風当たりも厳しくなるような気が。前途多難な予感。