ヨゴレICO日記7


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ヨルダのもとへ

雨の音が聞こえる。
崖から吊された檻の上にいた。下は海。檻を吊す鎖には、登れないようご丁寧にもトゲトゲまでついてたりして。同じような檻がいくつもぶら下がっているのが見える。多分、罪人を入れておく牢屋なんだろうな。

……行きますか。ジャーンプ。落ちた。CONTINUE? ×30ぐらい?(泣き笑い)

やっと崖の端っこまで飛び移れた。進むと水の流れが。ざぶざぶ進むと、水門とその奥に機械仕掛け。城の動力なのかな。でも薄暗くて見晴らし悪い。えーとどこだ?

まずは手近なスイッチをいじる。水門が開く。向かい側に梯子……行ってみたけどうーん届かん。届かないときの箱。って、水の中じゃ流れちゃったりしないんだろうか。えーいやってみるか。ざっぱん。流れない。意外と浅いんだろうかここ。梯子の下まで引っ張っていって、箱によじ登る。梯子に届いた。いいのかこんなことで。そのまま登って、スイッチオン。あっちの方で鎖が伸びた。

鎖……の前に、右手にパイプ発見。登ってみる。折れた。落ちた。ざっぱん。なんだこりゃ? 折れた先に何かあるわけじゃないしなあ。いいや。後回し。鎖にいく。

鎖もまた、そのままじゃ届かない……はいはい。箱を持ってきて、それを足場によじ登る。行った先に謎の物体。下にレールがあるってことは、動かすわけですな。がらんごろん。がっちゃんとはまり、歯車みたいなものが動くようになった。

この歯車、串みたいなのが生えてるんだよね……下で串に捕まり、上部にさしかかったところで飛び降りる。そこからパイプを伝って奥の方へ。行き止まりに鎖が2本。ていやー。落ちた。CONTINUE? ×3回ほど。やっと鎖に飛び移れた。さらにあっちの鎖、そして横回転する歯車の上へ。でいでいと進んでいくと、また外に出た。

絶壁をずりずりと伝い歩き。時々ジャンプ。心臓によくない(涙)

そして、円柱形の建物の中へ。ところどころ鎖や伝い歩きできるところがある。行ってみようか。うううジャーンプ。落ちた。CONTINUE? ×10回ぐらいかなー(涙)

やっと降りられた。出口の片方は例の彫り物。ヨルダがいないから開けられない。必然的にもう一つの出口へ。

船着き場、だろうか。オールもない小舟が一艘、独りで逃げろってこと? ←できません
そういえばここ、見たことがある……そうだ、最初、生け贄としてこの城に連れてこられたときに、舟でここへ着いた。ということは近い?

よく見ると、脇に道が。行くと、大振りの刀が置いてある。刃に刻み込まれた不思議な文様が、淡く緑の光を帯びている。これってもしや……
ぴんぽん。彫り物を退かしてくれた。入るとエレベータ。スイッチを押すと上昇を始めた。

棺の間――影たち

着いた先は、見覚えのある場所。自分が閉じこめられた、あの棺の並ぶ部屋。一段高くなったところに、ちょうど橋で最後に見たときと同じ姿のまま凍り付いたヨルダ、それを囲む影たち。大剣の切れ味を試してやるー。

ほぼ一振りで影は消えていく……けど、数多すぎ。きりがない。でも振り回す。その時、初めて気づいた。

影には、自分と同じ角がある。

棺を見ると、光っているものとそうでないものがある。もしかして影というのは――

影が現れなくなった。ヨルダのいるステージに階段が出現する。ヨルダは微動だにしない。行くか。階段をのぼって、ヨルダの母親の元へ。

玉座――願い

だだっ広い部屋。奥の玉座には誰もいない。あれ? 道間違ったかな……引き返そうとしたとき、その人は現れた。

案の定、娘をあきらめてさっさと出て行けと言われる。やーだよー。よっぽど逆鱗に触れたのか、吹っ飛ばされて角が一本折れる。こーのー。血の滴る頭を振りかぶって、玉座に向かう。

何度も剣を吹っ飛ばされた。そのたびに剣を取り返し、斬りつける。
戦う前に、ヨルダの母親は言っていた。自分はもう間もなく寿命を迎える。その魂の器として、ヨルダが必要なのだと。
やはり城の囚人なのだと思う。いつから、なぜそうなったのかは知らない。でも少なくとも、自らの意志で城にとどまっているわけではないように思える。母親も、かつてはヨルダのように、自分の母親から城の主となることを課せられたのではないだろうか。自分の意志とは無関係に。母は娘に、娘はまたその娘に――そうして代々、城に囚われてきた血脈なのか。根拠はないけど、なぜかそんなことを考えていた。

正門でヨルダと別れた後、すぐに自分にとどめを刺さなかったのは――

最初に向かっていったときの怒りは、斬りつけるたびに消えていく。今自分を動かしているのは、怒りではなく願い。迷いながら、迷うわけにいかないと、叩きつけられる漆黒の波に顔を上げ、剣を振り上げる。隣の部屋で時を止めた少女の姿を焼きつけながら。

そして、最後の一太刀が深々と女王の胸にささる。

「私を殺しても、ヨルダはこの城から出られない。 次に目覚めたとき、ヨルダはお前のことなど憶えていない」

呪詛のようなつぶやきを残して四散する躯。吹っ飛ばされて、もう片方の角も折れる。城が震えはじめる。血溜まりに顔を埋めながら、その臭いと共に気が遠くなる。ヨルダ――

エピローグ――さしのべた手

波の音、まぶしい――
小舟の中で目を覚ました。砂浜に打ち上げられている。城の外だ。ヨルダは?
砂浜を走る。サクサクと心地よい音がする。草が風にそよいでいる。陽の光がおしみなくすべてを照らす。でも、ヨルダは?

もうすぐ砂浜の端だ。もう一度、舟を漕ぎ出して(といってもオールもないけど)城に――そこまで考えて、今さら気づく。自分は舟でここに流れ着いた。あの状況で、自力で舟まではいずってきたとは考えにくい。まさか――まさか。気づきたくなかった考えに凍ったその時。

白い人影が視界に入った。波打ち際に横たわっている。
近寄ると、ゆっくりと目を開ける。

「次に目覚めたとき、ヨルダはお前のことなど憶えていない」

それでもいいと思った。
さしのべた手をとってくれるのなら、また出逢えるから。