ICO 感想


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感想のような紹介代わりのようなファントークのような。

柄じゃないのに

ちょっとアクション要素の入ったアドベンチャー。
少年が少女の手を引いて、城からの脱出を試みる、という状況。

うーん、本来、私の柄ではない。「日々是げえむ」に書いていたプレイ記録のタイトルが「ヨゴレICO日記」だからなー。こういう、ちょっと切ないボーイ・ミーツ・ガールは、ひじょーに柄ではない。ましてやアドベンチャーはほとんどやったことないし。

そんなわけで、タイトルだけ小耳にはさみつつも全然引っかかってこなかったんですが、発売前のCMでやられました。発売元のサイトでまだ観ることができるんですが、ゲームの世界をよく伝えていると思います。雑誌などに載っていた止め絵では何も感じなかったのが、動いて、音楽がつくとあそこまで破壊力あるとは。特にあのテーマ曲は卑怯だ(涙) 閑話休題。

というわけで、発売日に購入してプレイしてますが……システム面はどうなのか、私はアドベンチャーゲームをほとんどやらないので、実はよく分かりません。謎解きやアクションの難易度がどうとか、完成度がどうとか。ただ、私がほぼノーヒントで進められるということは、おそらく、謎解きやアクションプレイってところに惹かれて始めた人には、かなりぬるいんだろうなーとは思います。私にはちょうどよく……と言えればかっこいいんだけど、敵がもうちょい弱かったらなー、ってのはヘタレすぎですか?(爆)

つくりあげられたこの世界

システムより、細部まで丁寧につくられたこの世界にやられました。
「水彩画のよう」と評されるグラフィック、矛盾点のない城の造形、どこから手をつけても決して行き詰まることのない仕掛けの置き方。それ以外にも、随所に細かい配慮が見られます。

マニュアルに記載されているクレジットを見ると分かるんですが、キャラクターの動きはアニメータが描いています。流行りのモーションキャプチャではない。私は『ICO』を始める直前まで、モーションキャプチャフル活用のゲームをやっていたんで、違いをよけいに感じたような気がします。もちろん、『ICO』には手描きのキャラクターが正解。でなければ、絵本のようなこの世界から浮いてしまったんじゃないかと。
3Dのマップを歩き回らせるキャラクターだったら、おそらくモーションキャプチャの方がつくるのは楽だっただろうになあ……と思うと、こだわりに感謝。

あと、少女の動きはAIで制御されています。といっても、少女を鍛えて賢くするとクリアが楽になる、といったことではなく、単に人らしさ、存在感をもたせるためのもの。少なくとも、ゲームをクリアするために必須の要素ではない。
しかも、「AI」という言葉から連想されるほど、自律的にあれこれ動くわけではない。呼んだときにちょっとためらう動作をしてみたり、手を離してほったらかしておくとヒントを指さしたり、鳥を追いかけたり、ただどこかをぼーっと見ていたり……でもそれだけで、「封印を解くための道具」ではなくなる。手を引いて導くべき相手になる。不思議なもんで。私がプレイを始めた頃は「ゲームの仕様上しょうがないから」少女を連れていたのに、だんだんそういうことを考えなくなっていった要因の一つはそれじゃないかと。

職人が命を削ってつくりあげた、そんな気がします。
(いや、あの業界はなべてホントに命削ってるって話もありますが(爆))

で、そういった細部へこだわる理由が、こっちにも分かるし納得できる。すべてはこの世界をつくるため。少なくとも「わーいPS2だこんなにパワーがあるー」ってんでやっていることではない。あーでも、最初PSソフトのつもりで開発していたのが、途中でPS2に移行した(ので制作に4年もかかった)という経緯があるようなので、水彩グラフィックは「わーいPS2だー」の部分もあるのかな。いいのいいのそれはプラスになってるから。←都合よく解釈
それを引いても、制作者が確たる意図やねらいをもってつくっている、と感じるところがありました。普通ならもう少し登場人物を増やしてシナリオを厚くしそうなものだけど、それはやらない。不必要と判断したから。だと思う(スケジュールが押していたからじゃないよな多分)。そういう制作者の姿勢が伝わってくるゲームって、最近めずらしいかもと思ったり。マニュアルのクレジットを見ると、PS2にしてはスタッフが少人数なんだけど、きょうび贅沢な制作体制かもしれない。
ああ話がすっかりずれてしまった。そんなわけで、謎や疑問は尽きないけど矛盾や破綻はないこの世界で、プレイヤーは安心してイコでいられるわけです。

繰り返し読んだ絵本のような

そういった世界構築の細かさに比べて、ストーリーは謎の部分も多く、セリフも少ない。これを「説明不足」と思うか、「そんなこと説明されなくてむしろよかった」と思うか? 私は後者でしたが。ストーリーや設定をガチガチに固められたら、きっと興ざめだったろうから。説明やト書きだらけの絵本なんてあるかいな?

素朴な絵と少しの文字、たった十数ページなのに、それでも繰り返し読んだ絵本のような――そんなゲームだと思う。でも大人になった自分には、絵本=止め絵では、おそらくここまで入り込めなかった。それがゲームであった意味だと思う。


【どうでもいい話】
うーん何かほめてばっかだなあ、何か不満点は……と思ったら一つだけ、
「この人の手を離さない。僕の魂ごと、離してしまう気がするから」
ってコピーがどうもしっくりこないのを思い出した。このコピーに惹かれて買ったって人も少なくないのでアレだけど、前半部分だけでよかったような気が……イコがそこまで、自分の存在意義を少女を助けることに見いだしていたのかなー。まあそこらへんは各自の好みの範疇なので、この辺で。